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2010年6月29日火曜日

免疫システム







 免疫システムは本来自分の体のものではない、外来のものである侵入者から体を守るシステムです。そして非常に複雑なシステムで、それぞれ異なった役目を持ち体の中をパトロールしている免疫を担当している細胞の密接な連携により成り立っています。このシステムの中心をなすのは、それが感染物質であろうと自分の体の一部(自己抗原)であろうと、抗原物質を認識し反応することです。免疫システムは複雑ですが以下に簡単に説明します。

T細胞とB細胞
 免疫システムを担う細胞のほとんどは白血球です。リンパ球は白血球のタイプの1つですが、そのなかに主なものに2種類のリンパ球、T細胞とB細胞あります。T細胞は、免疫反応全てを調節する、とても重要な細胞です。T細胞はT細胞受容体と呼ばれる分子をその表面に持っています。この受容体は 他の細胞上のMHC(主要組織適合抗原)と呼ばれる分子と結合し認識します。このMHC分子は、体のほとんどの細胞表面にも存在し、T細胞が抗原を認識するのを手助けしています。B細胞は抗体を作る細胞です。抗体が抗原と結合することにより抗原破壊が始まります。この他に白血球に属する細胞としてマクロファージ、好中球があります。

マクロファージ、好中球
マクロファージ、好中球は血液中を巡回して、外来の物質を見張っています。これらの細胞が、細菌などの外来抗原を見つけると、それらを飲み込み破壊し、中毒顆粒をつります。もし、この中毒性顆粒が過剰に造られ続けたら、外来抗原を破壊するだけでなく、周りの組織までを破壊してしまいます。例えば、ウエゲナー肉芽腫症と呼ばれる自己免疫疾患では、マクロファージや好中球が過剰反応を起こし、血管に進入してたくさんの中毒顆粒を造り血管に障害を与えます。

MHCと補助刺激分子
細胞表面のMHC(主要組織適合抗原)は体の防衛隊としての重要な役割を担っています。例えば、ウイルスが細胞に感染したとき、MHC分子はウイルスの一部(抗原)と結合し、その抗原を細胞の表面に提示します。このように細胞表面に抗原を表示できる細胞を抗原提示細胞と呼びます。抗原を提示している各々のMHC分子は、結合可能なT細胞受容体を認識し結合します。それにより、抗原提示細胞はT細胞のどう反応するのかを知ることができます。しかしながらここで重要なのは、T細胞がMHC上の外来抗原に反応するためには、抗原提示細胞上のもう1つ別の分子がT細胞に第2のシグナル送らなければなりません。これらの第2の分子は補助刺激分子と呼ばれています。この抗原提示細胞とT細胞を結合させる補助刺激分子にはいくつかの種類のがあります。ひとたび、MHCT細胞がお互いに作用すると、補助刺激分子も互いに作用し、その後T細胞がたどる道筋を決めます。この道筋の中には、T細胞活性化、免疫寛容(例えば自己由来の抗原には反応しない状態)、T細胞の死などがあります。これに続いて起こるステップは、どのような補助刺激分子が結合したか、どのぐらい良く結合したかによって決まります。そして、これらの相互作用はとても重要です。

サイトカインとケモカイン
MHCT細胞受容体が結合し、さらに補助刺激分子が作用しあうと、T細胞はそれに反応しサイトカインやケモカインを放出することがあります。サイトカインは、蛋白質の1種で、免疫細胞を取り囲み、その種類によっては、細胞を活性化したり、成長させたり、殺したりします。また、これらは免疫システムに関係ない組織にも影響を与えます。例えば、あるサイトカインは、強皮症患者の皮膚を厚く、硬くする原因の1つとなっています。
ケモカインとは免疫細胞に作用する小さなサイトカイン分子のことです。ケモカインをたくさん造りすぎると体の臓器に侵入し炎症を引き起こします。このことは自己免疫疾患においても認められます。例えば、慢性関節リウマチ患者の関節内でケモカインを過剰に造られると、関節の中にマクロファージ、好中球、T細胞などの組織破壊を引き起こす免疫細胞の侵入を誘導してしまいます。

抗体
B細胞はもう1つのとても重要な免疫細胞です。B細胞は抗体をつくり分泌し、その抗体は抗原を見つけ出し結合して破壊し体から外来抗原を取り除く役目をあずかっています。しかしながら、このB細胞はT細胞からの正しい命令・シグナルを受けたときのみ抗体を作ることができます。ひとたび伝達物質として働くサイトカインによりT細胞からB細胞にシグナルが送られると、B細胞は あるただ一つ特定の抗原を標的とし抗体を造ることができるようになるのです。

自己抗体
ある種の自己免疫疾患では、B細胞は間違えて外来抗原の代わりに自分に体の組織(自己抗原)に対し抗体を作ってしまいます。時に、この自己抗体は組織の正常な機能をじゃまをしたり、組織の障害を引き起こしたりします。重症筋無力症という疾患を持つ人は筋力の低下を経験しますが、それは、筋肉に刺激を与え動かす神経の一部に自己抗体が結合することにより起こります。皮膚の疾患である尋常性天疱瘡においては、自己抗体は間違って皮膚の細胞を攻撃します。皮膚での抗体の蓄積は、皮膚の他の分子や細胞をも活性化して、皮膚に水ぶくれを作ります。

免疫複合体と補体システム
血液の流れの中でたくさんの抗体が抗原と結合すると、それらはお互いに結合しあった免疫複合体という大きな複合体を形成します。免疫複合体は、それが蓄積されると有害であり、組織を養っている小さな血管に炎症を引き起こします。もし免疫複合体が腎臓に沈着すると、さまざまな炎症細胞や炎症物質を腎臓内に招きいれます。この免疫複合体、免疫細胞、そして炎症物質は最終的に血流を止め、腎臓のような臓器を破壊することがあります。このことは、全身性エリテマトーデスの患者において認められます。
それぞれ特別な役目を持った補体成分よりなる補体システムは、免疫複合体を取り除く役目を担っています。補体成分は、血流中や細胞表面に認められますが、免疫複合体をより溶けやすく分解しやすくしています。補体成分は免疫複合体の形成を防ぎ、また免疫複合体のサイズを小さくし、それにより、体の臓器や組織などに免疫複合体が蓄積しないようにしているのです。まれに、ある補体をつくる遺伝子の欠損を両親より受け継ぐ人がいます。そのような人においては正常な量の補体成分を作ることが出来ないので、免疫システムは、様々な臓器や組織に免疫複合体が沈着するのを防ぐことが出来ません。そのような人々は自己免疫疾患ではありませんが、全身性エリテマトーデスと似た病気となります。

1 件のコメント:

  1. 何回読んでも難解でと言うか、私たちの体の仕組みが繊細且つ物凄いシステムで防御されていて、それをまた詳しく教えて下さる先生がいらして、今生きている私たちは奇跡の連続の中に生かされているような気分になりました。キリスト教会でアルバイトにクワイヤーを歌いにアルバイトに行っていましたが洗礼はついに受けることはできませんでした。でも、こんなに凄い人間が存在しているというのが何だか神様しか作れないのではないかしらと思わずにはいられない感じになりました。感動しています。生きているのが奇跡のように思われます。自分は生かされているのだと感じました。命を大切に思わないといけないと深く思いなおしております。有難うございました。

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